2022/08/25 18:59
よく皆様に【こだわっていらっしゃる】と言っていただくことがございます。
昨日鳥貴族の前を通ったら【こだわり抜きます】と書いていました。
こだわるってなんだろう?こだわり抜くって日本語として変じゃない?と思いながらこれを書いています。
僕は正直【こだわっている】気持ちなんてありません。
こだわるなんて言ったことないし、やりたいことを突き詰めた結果が今であり、それを自分から(こだわっている)と言うのもなかなか変な気持ちだからです。
そうやって言っているのに今日は(僕のこだわっているカヌレ)についてお話しさせてもらいたいと思います。
いや!お前こだわるって使わないんじゃないんかい!
って思ったでしょう。僕にとってのこだわりは深く考えると(どのくらい失敗したか)だと思っています。
僕はカヌレに関して死ぬほど失敗しました。
初めてカヌレを作ったときに初めて失敗して、それでも10数年もプロの料理人をやってきてここまで失敗するかとびっくりしました。
それゆえに何度も何度も失敗し、何度も何度も失敗したカヌレを食べ、幾重にも層を重ねるお腹の脂肪を作り上げてきました。
今の僕のカヌレがあるのはその失敗のおかげだと思っています。
食材にこだわったからできたのではなく、失敗を重ねることで結局美味しく素晴らしい焼き上がりに仕上がるのが素材の良さだっただけです。
近年カヌレブームが来て、今はもう下火状態なのだと思います。
僕は流行る前からカヌレを作り、流行終わってからもカヌレでは作り続けます。
最近ではしっかり作れるからこそカヌレに現れる【ス】に遊びを加えたりしていますが、
ここで一番言いたいのは【皆さん、ちゃんとしたカヌレを食べてください。】
ちゃんとしたカヌレです。別に僕のでなくてもいいです。
カヌレとは焼き上がりがしっかりと溝ができて、表面がカリカリ、中にはもっちりネッチリとしたカスタードソースがおいしいフランスの伝統のお菓子です。
フランスの伝統や日本での継承した伝統を守ろうなんて生は僕にはさらさらありません。
しかしながら近年では流行に乗ったせいか、全体的にモチモチしたカヌレやあからさまに形がいびつなカヌレなどがたくさん見受けられます。
僕はそれが大嫌いですが、それ自体を公に否定するつもりはありません。
ただここで言いたいのは上手でなかったり、食感のコントラストのないカヌレは(作り手の都合)がとても大きく反映されている事は頭に入れておいてほしいです。
私たち作り手は本来【美味しいものを作る立場】です。
たくさん作りたいから質を落とす、たくさん作りたいからなぁなぁにする、などは本来はNGです。
結局営業かよ、、。と思われそうですが、僕のカヌレは期待を裏切りません。
ここ最近いろんな角度からカヌレを考えますが、そもそもしっかりとカヌレでなければできないような工夫を楽しんでいます。
円安です。物価高騰です。色々と生活もしんどい局面もあります。
だからこそ【せっかく食べるなら】ちゃんとしたものを食べましょう。
最初にも言いましたが【僕のカヌレじゃなくてもいいんです。】
美味しいものを味わっている方々は僕の店でお食事されても本当にイキイキしていますし、楽しそうです。
そんな方々は【何が美味しいかを】知っています。
なぜ美味しいのかも、どこが美味しいのかもご存じです。
【美味しいものを食べる】ということは最短距離で【幸せ】を作ってくれます。
たかがカヌレですがここまで派手に何回も失敗して良かったと思えるような美味しいカヌレを僕はこれからも作ります。
生意気言ってすみません。