2025/05/05 08:55

これまでセットとしてご紹介してきたお菓子の中で、
ときどき「またあれに出会えますか?」と尋ねられることがあります。
「以前あった、あのフィナンシェはもうないんですか?」
「カヌレがすごく好きだったのに、今月は違うものなんですね」
そう聞かれると、ああ、あのときのお菓子を覚えてくださっていたんだと、
じんわり嬉しくなるのと同時に、少し考えさせられます。
僕はこれまで、「毎月違う」ということを大切にしてきました。
その月だけの味わいや組み合わせ、セット全体の流れ、物語の構成。
そういう“今だけ”の特別感を届けたいと思ってやってきました。
でも、それが少しずつ“目的”になってしまっていたかもしれません。
気づいたんです。
人は「今だけのもの」にときめく一方で、
「またあれに出会える」と思うことで、日々の中にひとつの安心が生まれるんだなって。
お気に入りの喫茶店でいつものコーヒーを頼むように、
季節の節目に、決まった和菓子を楽しむように、
「知っているけれど、また会いたい」という関係性って、すごくあたたかい。
それは、“新しさ”とはまた違う、“深さ”のある時間のつくり方なんだと思います。
これまで僕が毎月違うお菓子を考えていたのは、
たぶん、「もう一度同じものを出すのは手を抜いているように見えるんじゃないか」という、
どこか小さな焦りや、誤解されることへの不安もあったのかもしれません。
でも、今は少しずつ思えるようになってきました。
同じお菓子に、もう一度向き合うことは、むしろ誠実な姿勢なんじゃないかと。
だから、今後はカヌレやフィナンシェのような、
“また会いたくなる味”を、定期的にご紹介していこうと思っています。
特別な日でなくてもいい。
なにかの節目でもなくていい。
その月のどこかに、「あ、今月もあれがあるんだ」と思える週がある。
そんなふうに、お菓子が暮らしの中のちょっとした“リズム”になっていったら、
それはすごく豊かなことだと思います。
スタンダードなお菓子が、毎月顔を出すようなかたち。
それを、少しずつ整えていきたいと思っています。
あざした。
