2025/05/12 18:07
いつでも選べて、いつでも手に入るものって、たしかに便利です。
けれど、不思議なことに、人の気持ちは「いつでもある」と思った瞬間に、少しだけ関心が薄れてしまうところがある気がします。
食べ物も、音楽も、映画も。
「今じゃなくてもいいや」と思ったら、だいたいそのまま忘れてしまう。
だから最近は、「いつもそこにあるもの」よりも、
「ときどき会えるもの」の方が、ずっと心に残るんじゃないかと思うようになりました。
そう考えたときに、自分の中でひとつのかたちが浮かびました。
カヌレやフィナンシェといったスタンダードなお菓子たちを、
月に1週間だけ、定期的にご紹介していくこと。
それは、たとえば日曜の夜に放送されるドラマのような、
1ヶ月の中でちょっとだけ楽しみにしてもらえるような、そんな存在です。
特別な味じゃなくていい。
むしろ、「いつもと変わらないな」と思ってもらえるくらいのほうが、
安心して向き合える気がしています。
忙しい日々の中で、
「あ、今月もこの週に、あれがあるんだ」と思えるような存在。
そういう“暮らしの中のリズム”として、スタンダードなお菓子を根づかせていけたらと思っています。
この「月に1週間だけ」というやり方が、
売り方として最も効率的かと聞かれたら、たぶんそうではありません。
でも、毎月の中で少しだけ心が整うような時間。
ほんの少し日常の空気が変わるような1週間。
そういう感覚をお菓子と一緒に届けられるなら、それはすごく幸せなことだと思っています。
月の中の“ある週だけ”というリズムが、
その人にとっての“ちょっとした季節感”になっていく。
そんな時間のつくり方を、これから少しずつ試してみようと思います。
また、どこかの週でお会いできたら嬉しいです。
あざした。