2025/05/28 17:34
ここまで、6本の文章を読んでくださった方がどれほどいるのかはわかりませんが、
どこかの回でふと立ち止まってくれた方がいたとしたら、それだけで本当にありがたいことだと思っています。
僕はこの数年間、毎月変化のあるお菓子を作ってきました。
その月だけの構成、その月だけの味わい方。
そういう“一度きり”の物語のなかに、自分なりの喜びや意味を見つけてきました。
でも、今回こうして文章を少しずつ書きながら、
自分のなかにあった「もっと静かで、もっとしぶといものへの憧れ」に、少しだけ素直になれた気がしています。
それが、「スタンダードなお菓子を深めていく」という選択でした。
何度も焼いたカヌレやフィナンシェ。
レシピは変わらないけれど、気温や湿度、自分の気分や視線の置き方で、仕上がりは少しずつ変わっていく。
そんな微細な違いを、誰かと一緒に感じ取っていく関係が育っていったら、
それはとても豊かで、誠実で、幸せなものになる気がしています。
だから、これから少しずつではありますが、
カヌレやフィナンシェといったスタンダードなお菓子を、月に一度、1週間だけご紹介していくという形に移っていこうと思っています。
特別ではないかもしれない。
目を引くような新しさもないかもしれない。
でも、何度でも出会いたくなるような味を、
暮らしの中の“呼吸のようなリズム”として定着させていけたらと思っています。
この先、どこかのタイミングでまたカヌレが焼けて、
「あ、今月もあれが出ている」と思っていただけたら、
それだけで、この文章たちは意味を持つんじゃないかと思います。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
また、お菓子と一緒にお会いできたら嬉しいです。
あざした。